きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

中山を彩った名馬たち【34】ユキノサンライズ
1990年12月15日 ターコイズステークス

1着賞金3600万円。中山競馬場・芝外回り1600mを舞台に行われる牝馬限定のハンデキャップ重賞ターコイズステークスが、新設されたのは2015年……第1回の優勝馬は、友道康夫厩舎、戸崎圭太騎手騎乗のシングウィズジョイ、オーナーは社台レースホースだった。しかし、同レースの歴史を振り返ると、オープン特別として行われた1986年まで遡ることができる。
季節は師走。舞台はすべて中山。その年、GIというビッグタイトルに手が届かなかった陣営にとっては、
――ここを勝って、次の年に繋げたい。
そんな思いが交錯する熱いレースが毎年、繰り広げられてきた。
86年メーティス、87年メジロフルマー、88年クリロータリー、89年レディゴシップ。優勝馬には、中山に駆けつけた多くのファンから惜しみない拍手が贈られてきた。そして――90年、堂々の主役に躍り出たのが、菊花賞馬ホリスキー産駒初の中央競馬重賞勝利ホースとして注目されたのがこのユキノサンライズだった。

デビューは90年1月5日、中山で行われた4歳新馬戦。見事な逃げ切りで初勝利をあげると、続く2勝目も中山を舞台にした桃花賞(500万下)でも逃げ切り。さらに、重賞初挑戦となった中山のGIIIフラワーカップを鮮やかな逃走劇で制し、関東代表馬として桜花賞に歩を進める。ところが……レース中に不利を受けた阪神での桜花賞は14着。復帰初戦となった京都でのエリザベス女王杯も14着に終わってしまう。ひとつの躓きが、その後の競走馬生活に大きな影響をもたらす例は、枚挙にいとまがない。
――ユキノサンライズもここまでか!?
黒い翳りが忍び寄る。しかし、それでも中山のファンは、彼女の再登場を心から待ち望んでいた。オープン特別ターコイズステークス(芝2000m)で、堂々の1番人気。馬もその期待に応えようと、逃げ一辺倒の競馬から先行差しへとスタイルを変え、上がり35秒1の末脚で中山での4勝目を挙げた。生涯成績は17戦6勝。残り2つの勝利も、中山牝馬ステークス、中山記念で挙げたもので、まさに、中山で走るために生まれてきたようなサラブレッドだった。

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