きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

中山を彩った名馬たち【33】ミスタートウジン
1993年1月6日 ガーネットステークス

8月17日は、牧浦充徳 調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
無事是名馬――。
馬を愛し、馬に夢を託すオーナーのみなさんにとっては、GIタイトルにも双肩する言葉だろう。生涯成績99戦11勝。15歳まで現役で走り、一度も重賞を勝つことがなかったにもかかわらず、獲得賞金が4億円にものぼったという孝行息子、それが、ミスタートウジンだ。

――馬がかわいそうだ。
非難の声も挙がったが、藤立啓一オーナー、福島信晴調教師の想いは、微塵も揺らぐことはなかった。「馬が走りたがっているんやから、走らせたろうやないかという気持ちやった」と藤立オーナーが言うと、福島調教師も、「競走馬として生まれたからには、走れる限り、競走に出るのが幸せなんや。この馬が、仮にGIかGIIを取っていれば種馬になる道も残されている。けど、その時点では種馬になるのは無理だった。もし、ぼくの手を離れたら、もっと切ない結果になるやろう」と、己の信念を貫き通した。
100戦目を目前に、右前浅屈腱不全断裂の怪我を負い引退を余儀なくされたが、ファンやマスコミの注目を集めたことで、種牡馬入りという夢が叶ったことは決して、結果論ではない。オーナーと調教師の強い想いがあったからこその結果である。

このミスタートウジンの50戦目。それが、当時、オープン特別として行われていた中山のガーネットステークス(ダート1800m)だった。単勝2.1倍の1番人気。的場均騎手に導かれたミスタートウジンは、道中3番手をキープ。直線に入って力強く抜け出すと、後続に5馬身差をつけての圧勝で、皐月賞以来2度目となった中山の舞台で、見事、初勝利を飾った。
ミスタートウジンが優勝馬に名を連ねるこのガーネットステークスは、この後、1997年にダート1200mのレースとして、GIIIに昇格。08年、カペラステークスに引き継がれるカタチで廃止となったが、その記録と記憶は、いまも色褪せることなく輝いている。

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