きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

中山を彩った名馬たち【28】メリーナイス
1987年9月27日 第41回セントライト記念

四白流星――。
それが、彼を象徴する言葉だった。
最強世代のひとつと言われる1987年のクラシック世代……その中には、サクラスターオー、タマモクロス、イナリワンら、錚々たる顔ぶれが並んでいる。その最強世代の頂点、日本ダービーを制したのが、四白流星のメリーナイスだ。
1984年3月22日生まれ 牡 栗毛
馬主:浦房子
生産:前田徹(北海道静内前田牧場)
調教師:橋本輝雄(美浦)

「今日は勝ちにいきます!」
第1コーナーを10番手以内。3コーナーあたりで息を入れ、最後の直線で勝負に出る――鞍上の根本康広騎手(現調教師)が、思い描いていた通りの競馬で、日本ダービーを圧勝。“ダービーホース”の称号を手にしたメリーナイスが、秋初戦として選んだのが、1947年に創設された、このセントライト記念だった。
メリーナイスにとって中山は、最初のGI朝日杯3歳ステークスを勝った思い出の地。しかし同時に、皐月賞の前哨戦となったスプリングステークスが9着。クラシック初戦が皐月賞も7着と、目を覆うばかりの惨敗を喫した屈辱の地でもあった。
――日本ダービーで手にした煌めきを、さらに光り輝かせるために。
根本康広騎手とメリーナイスは、単勝1.9倍の圧倒的な一番人気に応えるように、道中、先頭から5番手をキープ。最後の直線で抜け出すと、そのまま力で押し切るという横綱相撲で快勝した。
――どうだ、これがメリーナイスの走りだ!
胸を張りウイニングランをする根本騎手はもちろん、メリーナイス自身もそう叫んでいるように見えた。
しかし……。
ラスト一冠、菊花賞は9着に惨敗。この年の有馬記念では、スタート同時に根本康広騎手を振り落とし競走中止。翌年、調教中に骨折し引退を余儀なくされ、この中山での勝利が、颯爽とターフを疾走する四白流星の最後の輝きとなってしまった。

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