きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

サザンクロス太閤記

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今週末のハイライトは、オーストラリアに新設されたスプリント世界最高賞金レース「G1ザ・エベレスト」。高額賞金でトップを走っているのは総賞金1200万ドル≒13億円・1着賞金700万ドル≒7億9000万円を誇る今年アメリカで創設されたG1ペガサスワールドCですが、莫大な賞金原資は1枠100万ドルの出走権料12頭分を充当するペガサスモデルともいうべき独自の方式に依っています。このモデルをそっくり踏襲してランドウィック1200mで行われるG1ジ・エベレスト。総賞金1000万AUSドル≒8億8000万円・1着賞金580万AUSドル≒5億1000万円は、芝レースとしては世界最高に君臨していた凱旋門賞の総賞金500万ユーロ≒6億1000万円を大きく上回ります。

この超金満レースに、何と日本から移籍したばかりの馬が出走します。ブレイブスマッシュをご記憶でしょうか。一昨年のサウジアラビアロイヤルCの勝ち馬ですが、新興牧場エスティファームの生産馬、ほとんど馬主の島川隆哉さんのプライベート種牡馬と言っても良いマイナー系トーセンファントム産駒として隠れファンの喝采を浴びました。母父トウカイテイオーというのも人気の秘密です。同馬主のトーセンスターダムが在厩しているオーストラリアのダレン・ウィアー厩舎に移籍して、スプリンターの才能を発掘されます。もともとの気性の烈しさが吉と転じたのだでしょうか。移籍緒戦はリステッドレース(準重賞)でしたが、後方から伸びてG1馬ヴェガマジックに半馬身弱の大健闘。2戦目のリステッドを勝ち上がって、頂上戦ザ・エベレストに挑むことになりました。喩えが適当か分からないのですが、草履取りから天下人に成り上がった太閤秀吉の物語を思い起こさせます。

さすがに強敵が揃っています。シャトークアはロンジンの世界ランキングで123ポンド評価を得ている世界有数のスピードランナーです。絶好調だった昨年に比べると、少し物足りなさも感じる近況ですが、ここでは格が違うかもしれません。2歳戦世界最高賞金のゴールデンスリッパーS勝者シーウィルレインは、南半球流だと明け3歳を迎えたばかりのフレッシュさが魅力です。前出ヴェガマジックも人気の一角を占めています。その比較からブレイブがそれなりの競馬を見せてくれる期待が膨らみますね。本能寺の変の急報に歴史に残る強行軍で遠征先から引き返して天下の趨勢を握った秀吉の“大返し”にあやかって、北斗星から南十字星の下へのブレイブスマッシュの大返しの行方に注目したいと思います。

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