きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

古馬天下の時代が来る?

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ヨーロッパ競馬はロイヤルアスコットが幕を閉じると、新たなステージ・3歳VS古馬の戦いが始まります。G1戦線で言えば、今週サンダウンのエクリプスSが皮切りとなりますが、今夏からは中長距離カテゴリーを中心に3歳馬に対するアローワンス(減量恩典)が、1990年以来27年ぶりに見直され、これまでより1ポンド(約0.5キロ)余分に背負わされることになります。BHA(英国競馬統括機構)はEPC(ヨーロッパパタン競走委員会)とともに過去6年間の馬齢重量データからは3歳馬の勝率が高く不均衡が生じており、3歳馬の成長が早まっている近年の傾向から、とくにシーズン後半の10ハロン以上のレースにおいて3歳馬の条件を古馬に近いものにすることで、より公正な競走環境を確保しようというものです。この新基準は、重賞、条件戦、ハンデ戦に至るまですべてに適用されます。

凱旋門賞は長い間、3歳馬有利と指摘されてきましたが、単に斤量差の問題だけではなく、複雑微妙な背景もあるようです。3歳馬が強い背景には強い馬がおおむね3歳一杯で引退してしまい、真の世代トップ同士による戦いになり難いからです。最近では牝馬のトレヴが凱旋門賞を連覇していますが、ザルカヴァもシーザスターズもゴールデンホーンも3歳を最後に引退しています。そもそもヨーロッパでは、競走馬として賞金を稼ぐビジネスより、その馬の価値を最大化できたと馬主が判断した時点で即引退し種牡馬ビジネスに精を出すのが主流です。ピークの能力を長年維持するのは困難なことですから、おおむねはクラシックを終えた3歳時が目安になります。彼らが現役生活を続けていれば、3歳馬有利の風評は少し説得力を失うことになったでしょう。

3歳馬に対して約0.5キロの斤量増が、勝負の行方にどの程度の影響を及ぼすものか、レースの流れや展開のアヤにも左右されますから、にわかに判断はできません。いきなり3歳天国が古馬天下に豹変するとも思えないのですが、ゴール前が一層スリリングなものになれば、この施策は大成功と言えるのでしょう。まずはエクリプスSの直線の攻防に注目したいと思います。今のところブックメーカー各社は、古馬の大将格ハイランドリールがキングジョージに回った影響もあるのでしょうが、英ダービー上位組のクリフスオブモハーやエミネント、2000ギニーで急成長ぶりを見せたバーニーロイなどの3歳勢に高い評価を与えています。さて、結果や如何に?

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