きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

引き出し

8月11日は友道康夫調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそいらっしゃいませ。

デビュー2年目となる女性ジッキー、藤田菜七子騎手が、一昨日、20歳の誕生日を迎えました。21.8倍の狭き門を突破した藤田騎手が、千葉県白井市の競馬学校に入学したのは、例年より10日も早く開花した桜が、冷たい雨に打たれながら、それでも懸命に咲き誇る2013年4月2日のことです。
「騎乗技術には男も女もない。小さい頃から負けず嫌いなので、体力をつけて男の子に負けないように頑張りたいです」
うつむき加減に話すその横顔には、初々しさの中にも、15歳で自分の進むべき道を決めた覚悟のようなものが感じられました。

あれから4年4ヵ月――。
16年ぶりにJRAに誕生した女性ジョッキーとして川崎競馬場でデビューを飾った藤田菜七子騎手は、奢ること無く、腐ること無く、笑顔を忘れず、“みんなから信頼される、愛されるジョッキー”を目指して、日々研鑽を積んできました。
そんな藤田騎手がJRA初勝利を挙げたのは、デビューから51戦目となる2016年4月10日の福島9R、パートナーは現在、大井で活躍している星野祐介氏が所有するサニーデイズです。勝利を祝福するウィナーズサークルは、人、人、人であふれ、競馬新時代の幕開けを告げるさわやかな風が吹いていました。
通算成績は、JRA13勝、地方11勝。
まだまだ、全幅の信頼を寄せて愛馬を託す……というレベルには達していませんが、海外での騎乗経験を含め数多くの馬に跨がり、厳しい勝負の世界に揉まれ、叩かれ、転げ、躓き、涙を流しながら、その引き出しは今、飛躍的に増えています。

引き出しの豊富さといえばもうひとり。7月8日の中京競馬で開催6日間の騎乗停止処分を受けていた小牧太騎手が戦列に復帰しました。この間、バッグひとつで豪雨被害に見舞われた福岡県朝倉市でボランティア活動に参加。90歳の女性がひとりで暮らす家に流れ込んだ土砂などを取り除く作業に汗を流していたと言います。
残念ながら、復帰を果たした5日、6日の小倉競馬で勝利を飾ることはできませんでしたが、騎乗停止期間にボランティアを経験したことで、ベテランの引き出しにまた新たな1ページが加わったことは間違いありません。
人から人へ伝播していく温かさ。日々を重ねる中で拡がる笑顔の輪。これも競馬の魅力のひとつ……ですよね。

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