きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

19万6517人の大コール

ようこそいらっしゃいませ。

弥生三月も今日で終わり。ようやく咲き始めたサクラとともに、明日から、卯月四月が始まります。
本日、3月31日を生誕の日とするサラブレッドは……第1回中山4歳牝馬特別(現桜花賞)を制したソールレデイ、第11回のダービー馬ミナミホマレを筆頭に、クロフネ、ヒシミラクル、シーザリオ、ショウワモダン、ヴィクトワールピサ、カレンチャン……と、綺羅星のごとく名馬が名前を連ねています。そして同じく今日、誕生日を迎えるのが、橋口慎介調教師と、中野栄治調教師です。
最近、佐藤愛子さんが書いたエッセイ「九十歳。何がめでたい」がベストセラーとなっていますが、やっぱり誕生日はいくつになっても嬉しいものです。
橋口先生、中野先生、おめでとうございます!

そこに100人の人がいれば100の人生があり、100頭のサラブレッドがいれば100の馬生があります。その中で、縁と縁が不思議な糸で縒り合うことで生まれる感動のドラマ……中野栄治騎手とアイネスフウジンが紡ぎだした物語は、今も競馬ファンの胸に鮮やかな刻印を残しています。

1990年 第57回 東京優駿――
この日、東京競馬場に詰めかけたファンも数は、19万6517人。
1番人気は、(有)メジロ牧場のメジロライアン。2番人気は、渡辺重夫氏のハクタイセイ。3番人気が、小林正明氏のアイネスフウジン。4番人気は、河越武治氏のユートジョージ……レースは5枠12番から飛び出したアイネスフウジンが、レースレコードで優勝を飾りました。
ドラマが起こったのは、ウイニングランを終えてスタンド前に戻ってきたその瞬間です。誰が最初の口火を切ったのか!? 確かめようもありませんが、誰かが、“ナカノ”と叫んだ声があっという間に伝播。19万6517人の“ナカノ・コール”が沸き起こり、スタンドを大きく揺らしました。

あれから27年。明後日、4月2日には、GⅠに昇格した「第61回大阪杯」が行われます。阪神競馬場を舞台に、どんなドラマが生まれ、誰のコールが鳴り響くのか。すべては神のみぞ知るですが、またひとつ、後の世に語り継がれるドラマが誕生することを願ってやみません。

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