きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

めざせハットトリック!

4月20日は梅田智之調教師、鈴木孝志調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそいらっしゃいませ。

サッカーなどで1試合に3得点以上ゲットすると、ハットトリックと讃えられ人々の話題を独占します。このサッカーの華にも負けない夢のあるお話が競馬場には宝石箱のように詰まっています。フランスには速歩、障害などを含めて200以上もの競馬場が全土に点在し、それらの多くは風光明媚な観光地とセットされて、競馬だけではない幅広い楽しみを提供している競馬大国です。フランスに現存する最古の城と言われるアンジェ城のお膝元・ワインで有名なロワール地方のルリオンダンジェ競馬場で先日行われた未勝利戦でオールディスタイムというドイツ産馬がデビュー勝ちを飾りました。鞍上は日本でもお馴染みのクリスチャン・デムーロ騎手でした。ミルコ・デムーロの弟さんですね。父ダビルシムは日本のハットトリックの名を世界に広めたヨーロッパ2歳チャンピオンだった天才マイラーです。

ハットトリックはマイルチャンピオンシップでダイワメジャーを下し、続く香港マイルも制してG1ハットトリックに王手をかけたのですが、その後はスランプに陥り、遂に勝てないまま引退しています。一瞬強烈な輝きを放ったのですが、サンデーサイレンス最晩年の産駒で同期にはダイワメジャー、ブラックタイド、1歳下にディープインパクトなど同系のライバルは強力で父の母国であるアメリカに渡って種牡馬生活を始めます。その初年度に交配したロイヤルアカデミー牝馬がフランス人オーナーに買われ、フランスで生んだ牡馬がダビルシムです。

ダビルシムは出遅れ癖、掛かり癖があり、決して完成されたサラブレッドというわけではなかったようですが、秘めるポテンシャルは底知れず、モルニ賞、ジャンリュックラガルデール賞とG1連勝時に手綱を執った世界のフランキー・デットーリ騎手に「これまでに私が乗った中では最高の2歳馬!」と絶賛されたほどです。しかしその後は屈腱炎に悩まされ、大本命で臨んだ仏2000ギニーで敗れ、再起を試みますが遂に復活はならずG1ハットトリックに王手をかけたままドイツで種牡馬生活に入ります。繋養先のカルツォフ牧場は、惚れ込んだダビルシムのポテンシャルを引き出すために奇策を編み出します。ダビルシム産駒の初勝利馬生産牧場に2万ユーロ、最初の重賞勝ち馬に5万ユーロ、最初のG1馬に10万ユーロのハットトリックボーナスを設定したのです。このキャンペーン効果か、ダビルシムは134頭とドイツの種付け新記録となる牝馬を集めます。その中の1頭がオールディスタイムだったというわけです。ハットトリックボーナスはもちろん、父や祖父が果たせなかった名馬の勲章=G1ハットトリックを目指してほしいものです。

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