きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

夢の対決

4月7日は木幡初也騎手、斎藤誠調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそ、いらっしゃいませ。

3回中山3日目第6R(3歳、未勝利戦・ダート1800m)で、親子4人が同一レースに騎乗するという、JRAでもはじめてとなる“夢の対決”が実現しました。
父・木幡初広騎手、51歳。長男・初也騎手、21歳。次男・巧也騎手、20歳、三男・育也騎手、18歳ーー。
2011年に発災した東日本弾震災で福島の実家が被災。心の痛みに堪えながら現役を続け、「育也が騎手を目指したときから、この日が来るのを楽しみにしていた」という初広騎手にとっては、オヤジとしての夢がかなった最高の一日になったのではないでしょうか。プロフェッショナルのジョッキーとして、淡々と自分の仕事に邁進してきた父と、その父の背中を追いかけた3人の息子たち。そこには、いま、世界が失いつつある何か……目には見ないけれど、心温まる何かが、たしかにそこにあります。

レースの結果は……
1年前の親子3人対決で勝利を飾った次男・巧也騎手が2着で最先着。父・初広騎手が6着。長男・初也騎手が13着。三男・育也騎手が16着。結果に関係なく、スタンドから送られた惜しみない拍手を聴きながら、ふと、育也騎手と同じく今年3月に卒業した横山武史騎手の卒業式で、父・横山典弘騎手が、ぽつりとつぶやいた一言を思い出しました。
「親子対決? そんなの思ったこともないよ。息子のことをライバルだと思ったこともないし……マスコミに言わされているだけでさ。でも……それで競馬が盛り上がるんならそれでいいんだけどね」。
確かに、そうなのかもしれません。
ーーすべては競馬が盛り上がるために。
そして、その陰には、いつだって、馬主さんがいます。

木幡親子のためなら――馬主さんにそう思わせた木幡親子もすごい。でも、馬主さんの粋な図らないなしでは、決して実現しないレースでした。

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