きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

香港ダービー【前】

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今週日曜のシャティン競馬場では香港ダービーが行われます。今年は昨年に続き史上初の三冠馬誕生なるかが話題の中心です。分かりやすいので三冠馬と言いましたが、正式には香港における三冠は、古馬にも開放されいるスチュワーズS1600m、ゴールドC2000m、チャンピオンズ&チャターC2400mのそれぞれカテゴリーの異なるレースを香港三冠シリーズと呼ばれています。三冠達成馬には高額ボーナスが用意されていますが、日本で言えば安田記念、天皇賞秋、ジャパンCを全部勝ち抜くような高難易度ですから、簡単には手にすることはできないようです。

若駒のクラシックは、クラシックマイル1600m、クラシックC1800m、ダービー2000mが香港4歳シリーズと銘打って、ほぼ2ヶ月の間に行われます。短期間に1ハロンずつ距離が伸びますが、日本流ならアーリントンC、スプリングS、皐月賞に対応しますから、難易度的には極端に高いハードルとは思えません。これなら三冠馬続出だろうと想像されるでしょうが、この仕組みがスタートして10年が経ちますが、完全制覇した馬はまだいません。4歳シリーズの特徴は、香港では加齢時期がそれぞれの馬の生産国の基準に準じていますから、夏に加齢される南半球生産馬は北半球流に言えば5歳馬であり、同じ4歳でも世代の異なる馬が一緒に競走することになります。生産のない香港ではオーストラリアやニュージーランドのオセアニア諸国、アイルランドを筆頭とするヨーロッパ、さらにアメリカ生産馬などが入り混じっていますから、こうした価値観融合のルールが生まれてきます。事の善し悪しではなく、独自の競馬文化を形成してきた歴史を尊重すべきなのでしょう。世界は広いものです。

さて今年は、史上初のシリーズ完全制覇馬が誕生するかもしれません。ラッパードラゴンというオーストラリア生まれの4歳馬です。ここまでクラシックマイルを2馬身、クラシックCを1馬身半と安定したレースぶりで勝ち進んできました。目下15連勝中の世界最強牝馬ウィンクスを出してリーディングサイヤアーに君臨したストリートクライの最良の後継馬ストリートボスの血統です。父同様オーストラリアとアメリカを往き来するシャトル種牡馬ですね。ストリートクライは惜しまれて死没してしまいましたが、さっそく後継馬が出てくるあたり、さすが勢いが違います。ラッパードラゴンの快挙が偉大な父の跡目襲名の口上となるのか?
話題満載の香港ダービー、明日もその話題を追ってみます。

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