きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

年度代表馬はマインディング

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1今年もジャパンCや香港G1シリーズがまだこれからという時期にカルティエ賞が決定され、同時にロンドン・ドーチェスターホテルで表彰式が行われました。確かにヨーロッパのG1シーズンは終わっているのですが、気が早いというか、相変わらずのヨーロッパ地動説というべきか、欧州圏の外から見ると違和感があります。それはさておき、今年の年度代表馬はオブライエン厩舎の3歳牝馬マインディングが戴冠しました。彼女は今季7戦5勝、勝ち星はいずれもG1で2歳時を通算すると7勝となります。彼女が傑出していたのは、マイル〈英1000ギニー、クイーンエリザベス2世S〉中距離〈プリティポリーS、ナッソーS〉長距離〈英オークス〉と幅広いカテゴリーで勝利を重ね、ロンジン社のレーティングでも3部門でランキングされているほどのオールマイティぶりでした。お見事!です。

対してフランス調教馬アルマンゾルは、血統的な距離不安からか中距離路線に的を絞って、仏ダービー2100m、愛英の両チャンピオンS10FとハイレベルG1の3勝を含む今季6戦5勝と輝くばかりの走りを見せました。愛チャンピオンSで凱旋門賞馬ファウンド、今回の年度代表馬マインディング、キングジョージとBCターフを逃げ切ったハイランドリール、英愛ダービー馬ハーザンドを一瞬の鬼脚で粉砕し、英チャンピオンSで再びファウンドを返り討ちにしたことを思えば、この馬こそ最強と考える人も多いでしょうね。

ヨーロッパ最強=世界最強?を決めるカルティエ賞は、ときに腑に落ちないことが起きます。世界競馬の礎を築き上げ確立し成長させてきた事実は厳然として存在しますが、外から見ると地動説風なヨーロッパ中華思想めいた思考回路も見え隠れし、さらに複雑なのは彼らが一枚岩ではなく、例えば英仏間には中世の百年戦争以来の遺恨も残っているとも言われます。こうした事情は1995年のラムタラ事件のような腑に落ちなさを現出させます。この年ラムタラは英ダービー、キングジョージ、凱旋門賞をわずか4戦のキャリアで完全制覇しますが、年度代表馬は英1000ギニー、コロネーションS、ムーランドロンシャン賞、BCターフを勝ったリッジウッドパールに輝きます。これはこれで年度代表馬にふさわしい立派な成績だが、ラムタラの偉業も比べるものがないほどです。選考の背景には、猛烈な勢いでヨーロッパ侵攻を続けていたゴドルフィンへの反感があったからとも伝えられます。リッジウッドパールもマインディングもそれぞれに立派で、貶めるつもりはまったくありませんが、冒頭の先行時期も含めて、世界中のファンに分かりやすいことが一番大事だと思います。

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