きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

幻のダービー馬

ようこそいらっしゃいませ。

競馬というのは、本当に一筋縄ではいきません。難しいものです。アメリカでデビューから7戦7勝と完勝に次ぐ完勝で、牝馬クラシック戦線のトップを独走していたソングバードが熱発のため、来月に迫ったケンタッキーオークスを回避することになりました。まったく危なげのないレースぶりで非常に評価が高かった馬だけに残念です。先日発表されたロンジン社の世界サラブレッドランキングでも120ポンド6位タイ、ダート部門ではドバイワールドCを勝ったカルフォルニアクロームの126ポンドが最高ですが、120ポンド評価は牡馬で古馬のフロステッドと並ぶ2番目のランクです。3歳牝馬としては突出した評価のされようです。

同じく7戦7勝でケンタッキーダービーの最有力候補に上げられているナイクィストが118ポンドで総合14位タイ、これに比べるとソングバードがどれほど傑出した評価を受けているか分かります。この牝馬には、早い時期からダービー挑戦待望論が巻き起こっていたほどで、今回の回避で“幻のオークス馬”というよりは、“幻のケンタッキーダービー馬”として歴史に名を残すことになりそうです。こうなるとファンの夢は、ナイクィストに二年連続の三冠馬になってもらい、そのナイクィストと復活したソングバードが、最高峰レースのBCクラシックで対決するという途方もないものに広がっていきます。競馬というのは、稀にそういうことが起きたりするスポーツですから、思わず期待せずにはいられません。

夢の実現といえば、フランスもそんな期待で盛り上がっているようです。7戦不敗で凱旋門賞までノンストップで走り抜けた天才牝馬ザルカヴァは、これまで3頭の子供を世に送り出してきましたが、いずれも競走馬としてデビューが叶いませんでした。しかし4番目のドバウィとの牡駒ザラクは順調に育ち、先日のメゾンラフィットで今季のスタートを切り、難なく2戦2勝目を飾りました。初戦は2歳時のドーヴィルでしたが、実に計算し尽くされたデビューでした。というのは今年のフランス競馬はロンシャンが改修工事のため、ロンシャン名物の各レースはいろんな競馬場に分散されて施行されます。ご承知のように凱旋門賞はシャンティイ開催ですね。ドーヴィルではクラシック序章のギニーレースが開催されます。そのためザラクのデビュー戦はドーヴィルの地で本番と同距離の1600m戦が選ばれたようです。母ザルカヴァと同様にアガ・カーン殿下の勝負服をまとったスミヨン騎手がこの上なく丁寧な騎乗ぶりで勝利に導いています。ちょっと大胆なところもあるジョッキーだけに驚きでした。それほどザラクは大事にされているんでしょうね。当面は5月15日にドーヴィルで行われる仏2000ギニーが目標で、その先の先には凱旋門賞があるんでしょうね。ザルカヴァ伝説第2章が始まります。フランス人ファンならずともワクワクドキドキのドラマが楽しみでなりません。

×