きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

香港G1優位性の秘密

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パート1国への昇格も決まり、今や競馬大国の域に達した香港ですが、依然として但し書きが外れない背景もあります。“生産なき競馬大国”という但し書きです。生産がないゆえに競走馬資源はすべて輸入に頼り、アイルランドやイギリスなどのヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドのオセアニア諸国が主要な輸入先となります。もともとイギリス統治による植民地時代が長く、エリザベス女王を君主と仰いできた歴史があります。競馬もそれゆえに早く発祥し目覚ましい発展を続けてきました。その原動力が香港国際競走と呼ばれるヨーロッパのシーズンオフに行われてきたグローバルなG1レース群です。

今では当初の暮れだけから新春開催に拡大され、ヨーロッパの開幕シーズンにあたる春競馬も確かな存在感を持ったビッグイベントへ成長してきました。香港国際競走の基本は高額賞金を備えた招待レースです。ヨーロッパでは滅多にお目にかかれないほど多額の賞金の魅力と招待特典をモチベーションに本場から強豪が参集します。彼らには競走馬輸出のキャンペーンという大きな目的もあるからです。最近ではヨーロッパにとどまらず、馬産王国オセアニアからも多くの有力馬が海を渡っています。強豪馬有力馬が揃えば揃うほどレースのレベルも上がり、レースレーティングも国際級のものになっていきます。地元香港馬が勝とうものなら、そのレーティングは世界クラスの一流馬評価を受けられます。香港競馬の質の高さは、実は狙って射止めた戦略的、構造的な仕組みがバックアップしているのです。“生産なき競馬大国”の弱みを、逆手を取るように見事に強みへと転換させた戦略思考には唸らされます。

今週のG1クイーンエリザベス2世Sのレーティングレベルは世界の9位にランクされています。その他の国際競走も多くは20位前後に集中してランクされており、日本と比べてもかなり優位に立っています。それらのレースが国際標準とも言える2000mや1600mに特化されているのも特徴です。既存の大阪杯のG1昇格ですべて良し、そういう底の浅い問題ではないように思われます。ヨーロッパから見れば、地理的な差異はほとんどないも同然で、馬の質でも遜色がないはずの日本と香港の差は一体なんなのでしょうか?日本競馬にとっては、考えさせられる大きな問題です。

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