きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

人の褌で相撲を取る

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今秋からスタートする海外馬券発売のアウトラインが発表されました。発売されるのは、単勝、複勝、馬連、馬単、三連複、三連単、ワイドの7種類で枠連、Win5はなしだそうです。向こうでは馬番はあっても枠という概念はありませんから仕方ありません。Win5もそもそも5レースも発売対象になることはないでしょうから成立しません。最初はその昔のように単勝だけでも良いじゃないか、そんな意見もあるようですが、応援する馬の勝利を願う馬券の原点回帰という意味で理念的には賛同できても、有力日本馬が1.0倍の元返しといった事態が頻発しそうで現実的じゃありません。単複ファンもいれば三連単一本槍の人もいるわけで、これはこれで良いのかなと思ったりします。

日本馬が出走することが条件で概ね1ヶ月くらい前にその動向を見極めながら発売レースを決定するそうです。凱旋門賞であっても日本馬が出なければ発売はなしということになるようです。大義名分としては日本のファンの熱心なニーズに応えるということでしょうから、これも仕方がないのでしょう。海外馬券発売というと聞こえは良いのですが、そもそも人の褌(ふんどし)で相撲を取る的な違和感があります。JRAとしても多少とも後ろめたさを感じているのでしょうか。大事なのは1レース1レースに凝縮されている歴史や伝統、その国のホースマンの思いの重たさを受け止めた上での馬券ということでしょう。そこには深い尊敬の念や愛情がなければ、ただの博打ということになってしまいます。

1週間ほど前、京都でオンラインカジノの利用客が摘発される事件がありました。今回の海外馬券は農水省の責任の元で国が管理運営するわけですから違法には当たらないのですが、同じコンピュータを活用するオンラインカジノとオンライン馬券がどう違うのだと突っ込まれると釈然としない思いも残ります。繰り返しになりますが、競馬という素晴らしいスポーツへのリスペクトの気持ちがあって初めて成立するとても難しい問題ではあります。JRAにはそのあたりの広報活動を予算に縛られることなく実施してほしいものです。

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