きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

年度代表馬

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香港でモーリスが“世界の”エイブルフレンドを倒し、安田記念、マイルチャンピオンシップに続く3つ目のG1を奪取したことで、年度代表馬争いの行方が混沌としてきました。今年は年初から重賞を勝ちまくり、それまで“善戦マン”止まりと思われていたラブリーデイが急成長に加えてすっかり成熟したレースぶりへと変身して宝塚記念、天皇賞秋を横綱相撲で制するなど年度代表馬に王手をかけた状態で晩秋の陣へ突入しました。牡馬クラシック二冠のドゥラメンテが休養中で、牝馬二冠のミッキークイーンも今ひとつインパクトを欠く状況ですからラブリーデイの安定さが頭一つ抜けているように見えたものです。ところがジャパンCでは牝馬2頭に足元をすくわれる3着、モーリスの快挙もあってチャンピオンの座に暗雲が立ち込めてきました。再来週の有馬記念が崖っぷちの勝負の場になります。

モーリスにとって年度代表馬は父子三代の悲願になります。父スクリーンヒーローは転厩で開業1年目の鹿戸雄一調教師の徹底的な立て直しが功を奏したのか馬が変わり、1年近い休養を経て条件戦からジャパンC制覇まで上り詰めた史上最大級の上がり馬でした。でも最後は女傑ウオッカの貫禄が混戦を制しています。祖父グラスワンダーはもっと惜しかったですね。その年は名馬揃いで天皇賞春秋連覇を果たした前年のダービー馬スペシャルウィーク、グラス自身もそのスペシャルを宝塚記念と有馬記念の両グランプリでいずれもハナ差退けています。直接対決で2戦2勝ですから、グラスに分があったのは明らかでした。

ところが春先からフランスに渡り、G1サンクルー大賞、凱旋門トライアルG2フォア賞を制し、本番でも歴史的強豪モンジューに遇わやの2着に健闘したエルコンドルパサーに年度代表馬の栄光が輝きます。今と違って凱旋門賞2着は凄い偉業に思われていた時代です。しかし今から考えても、その年のモンジューの強さは並外れていたと思います。あの馬の2着ならとエルコンドルパサーの偉大さが身にしみます。年度代表馬の座が3つあったらとファンの誰もが嘆息した年でした。
あれから16年、孫のモーリスが年度代表馬の座を争っている光景に日本の競馬も本物のブラッドスポーツになってきたことに感無量の思いで見つめるオールドファンも少なくないでしょうね。

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