きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

切磋琢磨の構造

ようそこいらっしゃいませ。

今年のBCはとにかく見どころがいっぱいです。三冠馬、凱旋門賞馬、新女王がこぞって姿を見せることは昨日お伝えしましたが、それ以外でも話題満載の番組が並んでいます。2歳牝馬のジュベナイルフィリーズには、ここまで3戦3勝うちG1を連勝中のソングバードに、あの歴史的ヒロイン・レイチェルアレクサンドラの初娘と眩しいばかりの血統を持つレイチェルバレンティナがチャレンジします。ヴァレンティナもデビュー戦で出遅れながら悠々と追い込みを決めて、2戦目にはG1を勝ってしまうという離れ技を演じました。
母はケンタッキーオークスで20馬身余りの大差勝ちを収めるなど、とにかく派手なレースぶりが際立っていましたが、娘はゴール前でちょいと先に出るお利口さんな省エネ走法ですね。この2頭のヒロインの戦いはこの先もずっと続き、全米のファンを熱狂させていくことになりそうです。両馬の父メダグリアドーロとバーナーディニをともに繋養するダーレーは来年の種付け料の値上げを早くも公表しています。なかなかに商売上手ですね。

さて登録料が無料な上に輸送費の補助付きと特典いっぱいのヨーロッパ馬が大挙して海を渡ってきたのが大きなセールスポイントになっている今回ですが、とりわけBCマイルが凄いことになっています。母父サンデーサイレンスの日本産でフランス調教馬のカラコンティは昨年に続き連覇を狙って、今年はシーズン初めからここ一本の狙いで調整されました。父がストームキャット系のバーンスタインで来春からケンタッキーのゲインズウェイファームでの供用が決まっており、勝つと負けるでは種付け料も段違い。一世一代の走りを見せるのでしょうか。
同じくゆったりしたローテーションで余力を残しているメイクビリーヴは仏1000ギニー勝ちのクラシック馬。前走G1フォレ賞は久々でしたが楽勝でした。底を見せていない点では一番でしょうか。
ロスチャイルド家のエソテリクは地味な印象ですが、使われながら力を付け、ジャックルマロワ賞を含めマイルG1を連勝中で今季通算が2-2-1-0と絶好調です。ロイヤルアスコットのクイーンアンSでは世界No. 1マイラーのソロウと1馬身差の競馬をしており男勝りなのは確かです。

ヨーロッパ勢の大攻勢、これと言うのも不滅のチャンピオン・ワイズダンの引退が少なからず影響しているのでしょうか。彼はヨーロッパ勢が強いBCマイルで一昨年まで連覇して2年連続年度代表馬に輝いたアメリカの誇り。本格化して以降は19戦17勝2着2回とほぼ完全無欠な走りを披露してきました。セン馬ですから8歳の今年もまだまだ活躍してくれると思っていましたが、骨折の不運から立ち直れなかったのは残念です。アメリカのファンは歯ぎしりする思いでしょうね。
でも今年はヨーロッパ勢とアメリカ馬が切磋琢磨するという本来の姿が実現されて、競馬としてもショーとしても最上級のレースが展開されそうです。今週の天皇賞秋の有力馬ラブリーデイには宝塚記念のご褒美にBCターフの優先出走権があったのですが、不参加は残念です。G1だけで13レース、カテゴリーは様々にあり選り取り見取りですから、来年はぜひ、日本馬の姿を見たいものです。

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