きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

チャンピオンズデーの苦悩

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先週末行われたヨーロッパ競馬のフィナーレを飾るチャンピオンズデー、スプリント、マイル、中距離、牝馬の長距離の各カテゴリーで年間チャンピオンを決めるシリーズ最終戦として企画され、カタールなどのスポンサードによる高額賞金も含めて頂上決戦にふさわしい威勢を誇っていました。斬新な企画は世界競馬全体に影響を及ぼし、同様な試みがお隣のアイルランドや南半球のオーストラリアでも実施され、大成功を収めています。競馬ビジネスモデルのお手本のようなチャンピオンズデーですが、今年はテレビ視聴率がガクッと落ち込んで先行きに暗雲が立ち込めています。視聴者数ベースで昨年の55万人から今年は36万人、35%弱の落ち込みという結果でした。フランケル・フィーバーに沸いた3年前に比べると3分の1くらいに減っています。主催者は日本でも注目され本国では大人気のラグビーワールドCとの競合を避けて発走時間を前倒しするなど手を打ったのですが、同時間帯のボクシングや同じ競馬の障害レース中継にも圧倒される有様だったようです。

原因は誰にも分かっています。凱旋門賞から2週間ブリーダーズCまで2週間、一流馬が万全を期して出走するにはローテーションが余りにもタイトなことが理由の一番目。そして二番目にしてかつ決定的な理由は、この時季のアスコットは雨に祟られるのが通常で良馬場は望めないため、トップホースの多くが出てこないことにあります。昨年も英愛のダブルダービー馬オーストラリア、史上最強級のマイル王キングマンがこの頂上決戦を前にさっさと引退を決めています。

今年も英ダービー馬で凱旋門賞馬のゴールデンホルンがBCターフに意欲を示しながらもチャンピオンズデーには見向きもしませんでした。大スポンサーであるカタール王族の所有馬トレヴですら春のロイヤルアスコットには出走したことがありますが、秋の決戦には遂に興味を示しませんでした。一流馬、なかんずく超一流馬にソッポを向かれているのが現状です。大ピンチです。アスコットというスーパーブランドをすら苦境に追い込んでしまうのですから、日本競馬も他山の石とすべきなのでしょう。有馬記念の近年の隆盛は馬主さんたちのポジティブな参加姿勢によるところが大きいと思っています。明日はこのチャンピオンズデーの復権について考えてみたいと思います。

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