きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

新旧激突の季節

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ロイヤルアスコットが幕を下ろすと、競馬は新しいフェーズに移行します。それまでの世代チャンピオンを競うクラシックフェーズから世代や牡牝の壁を越えた最強馬決定フェーズへの移行です。時期・天候やコースの異なる幾つものクライマックスを挟みながら、10月の凱旋門賞、チャンピオンズデーまで苛酷で熾烈に戦いが続いていきます。

新フェーズのテーマは、無論“新旧対決”に尽きます。歴戦の古馬と成長盛りの3歳勢、その微妙な力関係の公平化を担っているのが負担重量という伝統的な制度です。例えば6月下旬のキングジョージでは、古馬60.5キロ、3歳55キロ、牝馬1.5キロ減というレギュレーションになっています。それが3ヶ月余後の凱旋門賞になると、古馬59.5キロ、3歳56キロ、牝馬1.5キロ減に変更されます。5.5キロ差あった古馬との差が、プラスマイナスで一気に2キロも縮まる勘定になります。一説に凱旋門賞は3歳馬、とくに牝馬が有利とされています。凱旋門賞一つだけを捉えて見れば、確かにそうかもしれませんが、大きな流れの中で考えれば、3歳には王座に恥じないますますの成長が、古馬には盤石の強さと成熟が求められる世界の最高峰を争うにふさわしい構造になっています。

今年は7月4日に行われるエクリプスSが面白そうです。英ダービー馬ゴールデンホルン、仏ダービー馬ニューベイの3歳2強がエントリーし、ロイヤルアスコットの大一番プリンスオブウェールズSは惜しくも僅差の2着に敗れましたが、一連のG1戦線で安定した成績を残してきているザグレイギャッツビーが古馬代表で胸を貸します。金看板不在の欧州10F路線ですが、力関係を測る物差しという意味では、この馬あたりが最右翼です。ダービーを見る限り、ゴールデンホルンは相当に強いですね。血統的にはマイラー色の濃いケープクロス産駒で、10Fならもっと強いのではと想像を逞しくしたくなります。宿敵ニューベイは、今季絶好調のドバウィの血です。一世代だけを残して早逝したドバイミレニアムの奇跡の血が、孝行一人息子ドバウィを経て開花のときを迎えるのでしょうか。レースが楽しみです。

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